アベ鳥取堂・素晴ら椎茸

椎茸をメインとした駅弁は、これまでにも幾つかが販売され、中でも最も有名なのが昭和28年から販売している宮崎駅の「椎茸めし」。
駅弁好きの人に「椎茸を使った駅弁は?」と聞けば、おそらく多くの人が「宮崎の椎茸めし」と答えると思います。

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先ず、容器が丸い曲物風なところが、この弁当のイメージを醸し出しており良い感じです。
これが四角い弁当箱スタイルだと、印象的に普通すぎてインパクトが薄くなってしまうことでしょう。
「素晴ら椎茸」には、曲物風が良く似合います。本物の曲物だったら、もっと絵になるのですが、コスト的にそれは無理というもの。

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蓋を開けると、ドドーンと配された椎茸に圧倒。
その数、6枚。
しかも肉厚で、なんという大きさ!
こんな椎茸は、見たことがありません。
間違って大きくなりすぎた?とでも思える大きさなのです。

最初は気がつかなかったのですが、パッケージを見ると「ジャンボ115号椎茸」と書かれています。
この「115号」という名前を持つ椎茸は、調整元であるアベ鳥取堂の地元にある日本きのこセンターで開発された品種だそうで、地元生まれの食材という意味で、駅弁に相応しい品種です。
その椎茸は「ジャンボ」と称される大きさもさることながら、実は厚みも凄い。
測ると、1.5センチもありました。
味付けは醤油ベースですが、甘くもなく、辛くもないとても美味しいもので、噛むと煮汁がジュワッと口の中に広がります。
一緒に入っている鶏肉、人参、筍も同様な味付けで、この個性を主張しない味付けが良い出来上がり。
基本的に御菜は全てが煮物なので、濃さの按配を調整されているのでしょう。この辺の絶妙な調整に、老舗の駅弁屋さんを感じます。

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御菜に埋もれた感じのご飯は、薄味の茶飯ですから、ご飯だけではなく御菜と同時に食べるのが基本。
微妙な隠し味として、細かい山椒の粒(粉)が入っています。

鳥取県が生んだ偉大な椎茸(115号)をメインに、ベースとなるご飯も鳥取米。
歴史的に駅弁というのは、地元の食材で構成されることを基本としていたのですが、近年の様々な事情から、そうしたことが薄れてきているのが実情です。
そのような時代に、地元に関わる食材をメインとしたのがこの駅弁で、しかも、それが美味しすぎるほど、美味しいのです。

調整元のアベ鳥取堂と言えば、伝統の駅弁である「元祖かに寿し」が定番中の定番。
また、近年では企画が当った「ゲゲゲの鬼太郎丼」が有名かつ人気商品となっています。
そのような中で「素晴ら椎茸」は、ちょっと地味な存在ではありますが、味で勝負する絶対オススメの駅弁です。