厚岸駅「かきめし」

北海道、道東地域の政治経済の中心都市である釧路。
そこから、根室へ向かう根室本線の普通列車に乗って1時間弱で着くのが厚岸駅。
この厚岸、国内ではほとんどと言ってよいくらい知名度はありませんが、駅弁好きの間では超有名駅で、これほど世間とのギャップが大きい駅は他に無いと思います。

その厚岸駅の駅弁が、今回ご紹介する「かきめし」なのですが、この駅弁、最早イメージ的には駅で買う駅弁というよりも、催事で買う駅弁という方が合っている気がします。
これも、地方の小さな駅の駅弁ブランドを守るための時代の流れというものでしょう。

その「かきめし」を調整する氏家ですが、正確には「氏家待合所」と言います。
この「待合所」という呼び方は、北海道に特徴的な名称であり、他の地方では聞き慣れないと思います。
北海道は極寒の地なので、冬は駅で列車を待つのは中々厳しい。
そこで出来たのが暖かい駅前の待合所で、ついでに弁当を出すようになり、それが駅弁へと繋がったわけです。
これが「待合所」を名乗る駅弁屋が北海道に多い理由になります。

さて、その「かきめし」。
蓋を開ければ、ご覧のとおりいたってシンプルですが、中央に横1列に並んだ大きなカキが存在感抜群で、「ザ・かきめし」って感じです。
カキを弁当の名前にした駅弁はあちこちにありますが、これほどカキのインパクトが強い「かきめし」は他に記憶が有りません。

カキの煮汁をベースに炊いたご飯は甘口ですが、味付けがしっかりしているので、変な甘さが残らないのが弁当として秀逸。
そのご飯には、ヒジキが一緒に炊かれています。
ご飯の上には少量のアサリとツブガイ、そして椎茸が乗せられているのですが、特に若干の歯ごたえがあるツブガイが微妙なアクセントになっており好感が持てます。

そして、大きなカキが4個。
身が丸々と厚く、どこかの駅弁で使われている小さな(しなびたような・・・)カキとはわけが違います。
「カキ」を標榜しているからには、こうでなくてはいけません。

味付けは、全てに共通した醤油ベースの甘口で単調なのですが、逆に言うと、弁当として一つのまとまりのあるので、これはこれで良い味を出していると思います。

氏家待合所は、大正13年3月に札幌鉄道局から構内営業の承認を受け営業を開始。
厚岸はカキの産地として有名だったので、「かきめし」に先行してカキののエキスを使用した「かき饅頭」を商品化しています。
「かきめし」の登場は昭和38年頃とする説がありますが、旧国鉄の昭和38年構内営業記録には記されておらず、恐らく従来言われているよりも新しい、昭和46年頃からの販売ではないかと考えられます。