掛紙でお花見

今年の桜の開花が、「ちょっと遅い」と言われていますが、遅いというか本来の開花時期に戻ったような気がして、私的には嬉しい気がしています。
私が子供の頃(1970年代)の首都圏での開花は4月の初めで、ちょうど入学式の頃に満開となり、とても絵になったものです。

桜は日本古来から自生する品種も多く、奈良時代に編纂された『万葉集』の中でも多く歌われていますし、江戸時代には桜の花見が娯楽として、庶民の大きな楽しみの一つでもありました。

日本の、移り行く季節の中に定着している桜ですが、それは駅弁の中にも見ることが出来ます。
図1は、掛紙のデザインの中に桜を大きく描いたものの中からの一部ですが、小さく描いたものまでを含めると、実に多くの桜の掛紙が作られています。

図1
1大館駅花岡鉄三、2新庄駅新庄ホテル、3津駅安利屋、4京都駅荻乃家、5吉野口駅柳屋、6大阪駅水了軒、7高松駅高松濤軒、8佐賀駅新玉、9中津駅松葉屋、10大分駅梅乃家、11姫路駅まねき、12敦賀駅塩荘

図2は、日豊本線大分駅梅乃家の掛紙で、昭和戦前期の「お茶付き上等弁当」のもの。
写実的な桜の枝を全面に描き出したもので、お花見に行き、その美しさに惹かれて思わず垂れ下がる枝に顔を近づけてしまった錯覚を覚えます。
日本画的な雰囲気を伝える、掛紙の秀作だと思います。

図2

図3は、山陽本線姫路駅のまねきの掛紙。
姫路と言えば、なんと言っても姫路城ですし、姫路城と言えば桜です。
1000本以上と言われる姫路城の桜ですが、城の白壁に桜がとても映えることは、皆さんも写真などで一度はご覧になった事があると思います。
掛紙も、それを狙っての構図だと思いますが、背景のブルーの効果もあって、春らしい掛紙に仕上がっています。

図3

図4は、東海道本線大阪駅水了軒の掛紙。
左下に描かれているのは大阪城天守閣ですから、全面に描かれた桜は大阪城公園をイメージしたものでしょう。
大阪城公園の桜は、植えられた本数が多いことで名が通った名所となっています。
掛紙では、満開の群生した桜を遠景として、その様子を表現しています。

図4

図5は、奥羽本線大館駅花岡鉄三(現花善)の昭和戦前期の「上等御弁当」の掛紙。
大館には桜の名所が幾つもあるのですが、掛紙では満開の桜の木、中央には鉄道橋、そして背景に山を描いることから、おそらく市内を流れる長木川の堤防の桜と、花輪線の鉄橋を描いたものと思われます。
素朴な山間の町という雰囲気が、十分に醸し出さた掛紙ではないでしょうか。

図5