駅弁販売いま・むかし

国鉄からJRへと変わって三十数年が経ちます。この間に、列車の運行形態も大幅に変わりましたが、それにも増して駅構内での物販販売の姿も大きく変化しました。
今や魅力的な駅ナカ施設を作り、そのアガリで多くの不動産収入を得るのが経営の大きな柱の一つとなっているようです。

駅弁も、その影響を大きく受け、以前ならば特定の駅弁業者さんが構内で売るというのが、一般的な形態でしたが、今では駅弁業者さんとは思えない、普通の弁当屋さんが売ることの方が多いように思われます。
例えば、キオスクに替わって出店したコンビニで売られている、いわゆるコンビニ弁当とか、東京駅地下のグランスタの弁当屋さんなどが、その好例。
これらも含めて「駅弁」と称して紹介されている例も見られますが、やはりこれまでの伝統的な流れを考えると、それらは「駅弁」とは違う気がします。
しかし、残念なことに近年では伝統的な駅弁業者さんが、地方を中心に急速に減りつつあります。

そこで、今回は北海道を例にして、昭和39年と現在の駅弁販売駅を比較してみました。
駅名まで読めるようにしたので、地図が四分割にしてあります。
青枠が昭和39年の駅弁販売駅で、40年代に入ると廃業する業者が出てきますので、駅弁販売最盛期の時期ではないかと考え、この時期を選んであります。
赤枠は現在の販売駅です。ただし、使用している地図が廃線が行われていない昭和30年代のものなので、それ以後に開通した路線については当然ながら記載されていません。そうした例は、その都度本文で記しています。

地図1は、道南と呼ばれる地域が中心になりますが比較的駅弁業者が残っている地域なのがわかると思います。木古内駅は新幹線開業とともに新幹線停車駅となると同時に、在来線は道南いさりび鉄道へと移行してしまい、駅弁の需要が無くなってしまった駅。
倶知安、小沢の両駅ともに函館本線とは言うものの、函館から札幌方面へのメインルートが室蘭本線経由となってしまっている現在、ローカル普通列車のみでは駅弁として残るのは難しいのでしょう。
こうして、消滅した駅弁がある一方で、母恋、室蘭駅が新しい駅弁販売駅として登場しています。平成14年(2002)に発売が開始された「母恋めし」。1日あたりの調整数が少ないことから話題を呼び「幻の駅弁」と紹介されることもあり、今では駅弁大会でも大人気の駅弁です。

地図1

地図2は、道央と呼ばれる地区です。表示した駅以外に、その後に開業した南千歳、新千歳でも販売があります。
道央は、北海道経済の中心地とも言える地区ですが、意外にも消滅した業者が多く、昭和39年には12駅で販売していたのに対して、現在は半数の6駅になっています。
残っているのは、札幌、岩見沢、苫小牧の都市部と南千歳、新千歳という空港関連の駅に限られています。
ローカル線として唯一販売駅に残っている静内駅ですが、先日、日高本線の部分廃線が決まり、その中には当駅も含まれていることから、駅弁として消滅が確定的です。

地図2

地図3・4は、道東、道北と呼ばれる地区ですが、この地区は雄大な風景と大自然が広がる景色が、最も北海道らしいとして観光客に人気があります。しかし、その反面、地方都市と呼ぶことができる都市が少なく、北海道内では人口密度が低いところであります。
駅弁の販売は、昭和39年には24駅で見られましたが、現在では僅かに7駅のみという、3分の1以下にまで減っています。
旭川は、札幌に次いで北海道第2位の人口を擁する都市であり、道東、道北エリアの経済の中心地。そして、地図を見てもわかるとおり交通の要衝でもあり、道内では駅弁会社大手に数えられる旭川駅立売商会があります。同社は、道東、道北の複数の駅弁会社をグループ会社として経営しています。
このように、中核となりうる比較的規模の大きな会社が小規模会社を取り込み、駅弁事業を維持する方法も、今後の1つの姿であるのかも知れません。

地図3

地図4

現在も販売を続けている中で、最も小さな駅は1日14本のみが発着する、根室本線厚岸駅でしょう。
ここで販売されている氏家待合所の「かきめし弁当」は、1963年発売というロングセラーとして、全国有名駅弁の1つに数えられ、駅弁大会などの催事でも多く売られています。
恐らく調整数で見ると、駅売りよりも催事での販売数の方が圧倒的に多いものと思われますが、これも商品を残す手段として1つの在り方なのかも知れません。

いま見てきたように、道内の駅弁販売駅数は昭和39年には46駅を数えましたが、現在ではその半数以下の21駅にまで撃滅していることがわかりました。
ただ、現在数については駅弁の捉え方により数え方も変化するので、若干の変動はあります。

もともと駅弁は、鉄道が長距離、長時間の移動手段として使われていた時代に、食事時間帯にかかる旅行者への給食を目的として発達してきました。
ご存知のように、最近では列車の速度が高速化し、最大でも数時間の乗車で目的地へ到着する場合が多く、食事は目的地へ着いたら「食べ歩き」などのグルメ志向へと変化。
また、高速道路網の整備により、安価な高速バスや自家用車での移動が鉄道輸送を上回る傾向も見られます。

北海道の駅弁地図を見ると、路線そのものが消えてしまった(廃線)がために終売となった駅弁があると共に、主要駅間に挟まれた中間駅での駅弁販売が終了している所が、とても多いことがわかります。
旅行者が、空腹を覚えた時に気軽に利用できる給食としての本来の駅弁の姿は、最早、過去のものになってしまったようです。