6月、夏が始まりました。
夏と言えば、風鈴、花火、朝顔、西瓜に素麺。
そして鮎。
とは言うものの、最近では季節感がすっかり無くなってしまい、花火は5月の連休前に売られていますし、近所のスーパーでは4月に西瓜が並んでいるのを見たことがあります。
鮎だって、5月になると目にすることが多くなります。
しかも、最近は養殖物の鮎が幅を利かせているので、昔食べたようなサッパリとした風味の鮎に出会うことが、すっかり少なくなってしまいました。
その鮎を捕まえる鮎漁。
恐らく100パーセントの人が川釣りを思い浮かべると思いますが、今回のお題である鵜飼も立派な鮎漁の一つ。
そして鵜飼と言えば岐阜市長良川が定番中の定番ですが、それ以外にも山梨県笛吹市笛吹川、京都府宇治市宇治川、広島県三次市馬洗川、大分県日田市三隅川など、関東から西日本の各地で行われており、東京都狛江市の多摩川でも昭和30年代中頃まで行われていました。
画像1は、明治時代から岐阜駅で駅弁を販売している嘉寿美館が、昭和6年に上等弁当の掛紙として使用したもので、極めて美しく、芸術作品とでも言える掛紙です。
描かれているのは、鵜飼の様子。
長良川に浮かぶ3艘の鵜飼船と、手前には見学用の観光船を描いています。
我々の目線は、ついついそちらに向きがちですが、右上を見ると金華山とその山頂には夕闇のシルエットに浮かぶ岐阜城も描かれており、鵜飼のロケーション全体がよくまとめられた秀作と言えます。
画像2は、同じ嘉寿美館の「鮎寿司」の掛紙で昭和4年のもの。
こちらは一転して鵜飼の近景を描いており、鵜を操り漁を行う様子を知ることができます。
左下の製造元を記したシルエットは、捕獲した鮎を入れる「鵜篭」をデザインしたものであり、掛紙デザインとしての「鵜飼」へのこだわりを見ることができます。
この「鮎寿司」、明治時代から続く伝統の味として嘉寿美館の看板商品であったのですが、同社の自己破産(2005年)により姿を消してしまったのは、今思っても残念でなりません。
夏の彩りの一つであり、日本の伝統文化でもある鵜飼と鮎。
嘉寿美館の掛紙は、毎年この季節になると、それを思い出させてくれます。