明治24年創業の老舗、岡山駅の駅弁業者である三好野は、一年を通して多品種な駅弁を展開いしているのが特徴と言えます。
中でも有名なのが、昭和38年から続くロングセラー駅弁である「祭りずし」ですが、近年の駅弁大会でコンスタントに売れるのが、今日ご紹介する「岡山旅めし」。
「祭りずし」と「岡山旅めし」では、購入されるお客様の層に微妙な違いがあり、「祭りずし」はリピーターが主体で、「岡山旅めし」はチラシ等の広告をご覧になり買いに来られる方が多く、特に女性が多いように見受けられます。
中にはチラシを持参され「これある?」と聞かれる方もいらっしゃり、駅弁がズラリと並んだチラシの中で色味が良く、華やかに見えるところが、女性の心を捉える一因ではないでしょうか。
さて、その「岡山旅めし」の蓋を開けると、ご覧のとおり見た目が華やか。
量は少な目に見えますが、女性にアピールするには十分なプレゼンテーションでしょう。
白ご飯の上に乗るのは「牛しぐれ煮」で、肉はもちろん岡山県産を使用。適度な脂身が程よくパサつきもなく、生姜を使った味付けがご飯とよく合います。
その隣りの椎茸は、「しぐれ煮」とは異なる甘めの味付け。
御菜の左上にある小さな貝の煮付けは、「も貝」。
「も貝」と言うのは地方名で、一般的にはサルボウと呼ばれ、味はアサリに似ているのですが、アサリより身が厚いのが特徴でしょうか。
岡山では、「ばら寿司」や「雑煮」などの郷土料理に多く使われるそうです。
写真には写っていませんが、この下に「海老コンソメ煮」が隠れています。
一見したところ、ごく普通の鶏唐揚げが二つありますが、塩糀で味付けされたちょっと一ひねりの一品です。
ですが、せっかくの味付けが醤油ベースなので、そちらの味が濃いのが残念と言えば残念。
人によっては、普通の唐揚げと思ってしまうかも知れませんから、もう少し糀の風味を前面に出した方が良かったかも・・・。
鶏肉は岡山県産を使用とのこと。
唐揚げの下にある「柿入り大根生酢」は、よく気をつけて食べないと、オレンジ色のものを千切り人参と見間違ってしまうのですが、実はこれが柿なのです。
人参ならば普通ですが、柿を使ったところがアイディアであり、柿の産地として知られる岡山をさりげなくアピールしています。
そして、その上に乗っているのは「ままかり酢漬」。
「ままかり」とは西日本での呼び名で、関東では「さっぱ」と呼びます。
ニシン科の魚なのですが、なぜか関東ではほとんど食用にしておらず、この辺が地方ごとの食のバラエティとして面白いと思います。
その「ままかり」ですが、「まま」とは「まんま」すなわち「飯」のことで、この魚の酢漬があまりに美味しいので、「飯」が無くなると隣の家から「飯」を借りてまで食べるということで「ままかり」と言い、漢字ではズバリそのもの「飯借」と書きます。
この「ままかり酢漬」は、岡山の郷土料理の一つでもあります。
そして、食後の菓子として「きび団子」が二つ。
江戸時代の終わり頃に登場した岡山銘菓であり、餡を使用しない淡泊な味が特徴なことから、デザートにサッパリとよく合います。
「岡山旅めし」。
ネーミングのとおり、岡山の味覚を旅する駅弁として、岡山旅行の締めに、帰りの車中で味わうのにぴったりなお弁当です。