新見駅と大阪屋

秋も終わりに近づき、東京でも紅葉真っ盛り。
というわけで「なにか秋らしい掛紙は」と思い探したところ、紅葉シーズンにピッタリの掛紙が数枚見つかりました。
今日は、その中から伯備線新見駅で、かつて構内営業を行っていた大阪屋の掛紙です。

新見駅は、山陽新幹線沿線から山陰地方へ抜ける幾つかのルートのうち最も主たるもので、岡山駅からの特急「やくも」の全列車が停車する伯備線の主要駅。

画像1 新見駅位置図

画像1の位置図をご覧になるとわかりますが、岡山駅と米子駅のほぼ中間に位置し、伯備線の他に姫新線と芸備線が乗り入れる、中国山地のターミナル駅の役割を担っています。
こうした立地から、新見では駅の他に新見機関区(画像2・昭和45年9月26日撮影)が設置されており、昭和44年(1969)にはD51とC58形蒸気機関車が、合計38両も配置されていました。

画像2 新見機関区

このように新見の町は、主要駅であるのみではなく、機関区も設置されているなど、山あいの鉄道の町として、賑わっていました。
画像3は、昭和45年(1970)9月26日の早朝に撮影された新見駅前の様子で、正面に見える駅舎は、現在も使用されているもの。

画像3 新見駅

新見駅は昭和3年(1928)10月、伯備線全線開業に伴い開設されました。
大阪屋は、開業から4ヶ月を経た昭和4年2月7日付で大阪鉄道局長の承認を受け、駅弁販売を含む駅構内立売を始めています。
許可理由は、鉄道敷設にあたり関係者への宿舎の提供や、鉄道用地買収交渉への協力があったためとされています。
ホーム立売は昭和47年(1972)に廃止、ホーム売店の出店営業へと移行しますが、それも平成14年(2002)に撤退、以後は特急「やくも」の車内販売のみになりましたが、平成21年(2009)年9月30日で終了となってしまいました。

このように、今では直接的には鉄道と結びついてはいない大阪屋ですが、現在も新見駅前にて仕出し料理・弁当店として営業を継続しており、日本鉄道構内営業中央会の会員の登録業者となっています。

画像4 上等御弁当掛紙

画像4は、昭和12年(1937)2月に使用された「上等御弁当」の掛紙。
紅く色づいたモミジに栗、そして松茸という秋を代表する産物を描いたもので、いかにも山あいの町というイメージを、上手く表現しています。
おそらく、前年の昭和11年秋用の掛紙として用意されたものが、冬場まで持ち越されて使用されたものと考えられます。
昭和11〜12年と言えば、戦前の日本の国力がピークに達した時期であり、余暇を旅行やレジャーで楽しむことが一般の人々の間に浸透してきた時代。
そのような社会事象を、秋の産物で表現した掛紙の秀作ではないでしょうか。