ウニと駅弁

北海道では場所を変えながら、年間を通してウニ漁が行なえますが、その他の地方では5月から8月頃までを漁期としている所が多いようです。
ということで、もうすぐ夏の終りが近づくので、今日はウニのお話。

ウニは、今から3000〜10000年くらい前の縄文時代に生きた人達も盛んに食べていたらしく、縄文時代の人々がゴミ捨て場としていた貝塚の中からも、ウニの貝殻が出土しています。
ですから、我々日本人とウニとのお付き合いの歴史は、とても長いことになります。

ウニと言えば、まず頭に浮かぶのは寿司ネタとしてのウニで、海苔に巻かれた、あのウニ軍艦ですね。
回転寿司ではない、それなりのお店に行くと1000円〜2000円はするでしょう。
でも、それを口にした時の、あのちょっとネットリとした食感と同時に、口の中に広がる独特の磯の香りが「日本人でよかった〜」と思わせる瞬間です。
私には、絶対に外すことができない寿司ネタの1つ。
また、北海道に行けば大抵1〜2食は生ウニがてんこ盛りになった「ウニ丼」を食べます。

そんなウニですが、生ものなので日もちがしない欠点がありました。
それを克服して、日もちのする加工食品に変えたのが江戸時代の福井藩。
ウニを塩辛にするという技法を開発し、保存食とし、将軍家への献上品とすることに成功。後に「天下の三大珍味」と言われるようになります。
「汐ウニ」と呼ばれるのが、それです。

画像1

画像1は、寛政11年(1799)に出版された『日本山海名産図会』から、越前における「汐ウニ作り」を紹介しているページです。右の岩場でウニを採取し、左の浜辺でそれを塩辛に加工している場面が描かれています。
ちなみに「三大珍味」とは、「汐ウニ」「からすみ」「このわた」のこと。

さて肝心の、ウニを使った駅弁ですが、生では駅弁にはならないので、加工することになります。

画像2

駅弁で使用されるウニは、ほぼ100パーセントが常温でも扱いやすい蒸しウニ(画像2)で、画像3の一ノ関駅斉藤松月堂さんの「平泉うにごはん」も蒸しウニ。今は弁当の形が四角ですが、以前は八角形で、ウニの量は以前の方が多かった気がしないでもありません。

画像3

ウニが駅弁の素材として着目されたのは、食材としての扱い方が難しかったことが影響し、意外と新しく昭和44年(1969)のことなので、まだ半世紀と少し。
「うにめし」という名前で最初にウニを売り出したのは、常磐線平駅(現いわき駅)の住吉屋でしたが、今となっては残念ながら「うにめし」も会社も残ってはいません。

画像4 「たらば蟹海鮮御膳」稚内駅

ウニをメインとしたもの以外に、画像4のように海鮮系弁当の一部にウニを取り入れたものを加えると、今では北海道や東北地方を中心にけっこうな数のウニ駅弁があります。
そして、そのきっかけを作ったのが、先に記した平駅前で旅館業を営みながら、明治31年から構内営業を行なっていた住吉屋。
ウニ駅弁のパイオニアである住吉屋も、自身が廃業後に、まさかウニ駅弁がブレイクする時代がやって来るとは、思ってもいなかったことでしょう。