日本酒付の駅弁

夜遅い新幹線に乗ると、ちょっとしたツマミを友に、缶ビール1、2本を楽しむ出張帰りのサラリーマンをよく目にします。
「大変ですね、お疲れさま」
って感じで、それをいつも横目で見ながら思うのですが、その酒のツマミに駅弁を選択される方は、なぜか少ない。
まぁ、懐具合との相談の結果なのかも知れませんが・・・。

例えば幕の内弁当の御菜。
蒲鉾、卵焼、焼魚、肉料理、漬物、フライなどなど、見方によっては正月のお節料理のようでもありますから、意外と酒の友になると思うのですが、どうでしょう?
500ミリの缶ビールで御菜を味わい、最後の腹ごしらえにご飯もあります。

ビールほど万人向きではありませんが、日本酒とセットにした駅弁がありましたし、地方の伝統的な駅弁屋さんが郷土料理を打ち出した、そうした駅弁をもっと販売してもいいように思います。

例えば、東北本線仙台駅には「ほろよい弁当」という、仙台の地酒「一ノ蔵」のミニチュア瓶と御菜として海老の煮物、イカの炒め物、焼魚、焼豚などを入れ、締めのご飯として鮭と鯛の押寿司を入れた、二段重ねの駅弁がありました。

山陰本線松江駅には、「ごきげんべんとう」という地元宍道湖畔の酒蔵国暉(こっき)酒造が作る「国暉」(甘口)と「湖上の鶴」(辛口)の2本をセットにし、蟹の酢の物、あまさぎ甘露煮、うなぎ煮、あごの焼物、赤貝煮、しらうお掻揚げ、しじみ時雨煮、とんばら漬け、安来たけのこ煮、俵形ご飯など地元の食材をふんだんに取り入れた駅弁があります。
ただ残念なことに予約制。
やはり旅行や出張には、いつでも買えるという点がポイントだと思うのですが・・・。

北陸本線金沢駅 大友楼「菊酒弁当」

画像は、北陸本線金沢駅で予約販売されていた「菊酒弁当」。
たしか、日本酒付駅弁の最初のものだったと思います。
調製元の大友楼は、駅弁調製も行っていますが、加賀料理の老舗としての格式を備えた料亭。そのためか、どの駅弁も一味違った華やかさを持っているのが特徴です。
「菊水弁当」は、加賀料理のじぶ煮、胡桃とゴリの佃煮、味噌入り湯葉、カワハギの焼物、大根漬け、蒲鉾、海老の煮物などの御菜の他に、笹寿司(鮭と鱒)が2個入っていました。締めの食事が、白ご飯ではなくて笹寿司というところが、さすが大友楼という感じがします。
肝心のお酒の方は、地酒としてとことん地元にこだわった酒造りをしている、金沢中村酒造の「日榮」と「太郎」のミニチュア瓶が1本づつ。甘口と辛口が揃っていました。

日本酒付きの駅弁は、万人向けとは言い難いので、なかなか販売が難しいとは思います。そのため継続的な、しかもいつでも買えるという形態ではなく、予約販売になってしまうのでしょう。
ただ、夕方まで仕事をして、遅い新幹線で帰宅する出張族のささやかな楽しみとして、新幹線主要駅で販売があってもいいのではないでしょうか。
郷土料理を取り入れた御菜に、ご飯物も一工夫し、地酒、しかも純米酒ならば言うことはありませんし、濁り酒も素朴な旅情感があっていいものです。

最近は、経費削減のあおりで宿泊が認められず、夕方に仕事が終わったらすぐに帰るという出張が多いサラリーマン。
仕事のご褒美に、車内で郷土料理と地酒が楽しめる、こんな駅弁をささやかに楽しむのも乙なものだと思うのですが。