富山駅「ぶりかま」

師走。
12月の魚と言えば、やっぱり鰤。
この時期の鰤を「寒鰤」と呼ぶのは、皆さんもよくご存知だと思います。
鰤は、刺身や照焼きが一般的な食べ方ですが、塩焼きも良いし、近年スーパーなどでも扱っている糀調味料を塗って焼くのも、また美味い。

その鰤の名産地として有名なのが、今では富山ですが、江戸時代では同じ日本海側でも、富山よりずっと西に位置する若狭湾に面した丹後、特に与謝野が有名で、江戸時代中期の寛政11年(1799)に出版された『日本山海名産図会』に「丹後与謝の海に捕る々もの上品」とすることが記されています。
挿絵から、仕掛けた網の中に鰤の群れを小舟で追い込む、追網漁であったことがわかります。

『日本山海名産図会』より

現在、鰤を使った駅弁として有名なのが、富山駅の駅弁業者である源が調整する「ぶりかま」。
数年前の発売開始と同時に、駅弁界に一大「ぶりかま」ブームを起こしたのはよく知られるところで、駅弁大会では異例の大量仕入れを行っても、すぐに完売という状況が続きました。

蓋を開けると、そのサイズにスッポリと収まった鰤カマが迫力十分に鎮座してます。
見た目にコッテリとした感じの照焼きに見えますが、食べてみると意外と濃くはなく、誰にでもオススメできる味。
もちろん駅弁なので冷めた鰤カマですが、それでいて硬くはなく、割箸で崩れるほどに柔らかいのは、冷めることを前提に調理する駅弁の基本が、しっかりと守られているということでしょう。

鰤カマの周りには、紅ズワイガニと白海老が少々で、どちらも富山の名産品。

ご飯は酢飯なのですが、刻み生姜と刻み昆布が混ぜてあります。
この刻み生姜の存在が大きく、これが有るのと無いのとでは、味の印象がすっかり違ったものになると思います。
刻み生姜が、照焼き特有の微妙な甘さ加減をスッキリと調整してくれます。

源と言えば「ますのすし」が看板商品ですが、本品を食べてしまうと「ぶりかま」が看板商品でも良いような、そんな気にさせてくれる駅弁です。