札幌駅「石狩鮭めし」と旧士幌線

現存する北海道最古の構内営業者である札幌駅立売商会が、北海道炭礦鉄道より営業許可を受けたのは明治23年4月のことですから、130年以上も続く北海道を代表する老舗企業と言えます。
その立売商会が大正12年に発売したのが、今日ご紹介する「石狩鮭めし」で、こちらも発売から100年を超える伝統の駅弁です。

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現在の「石狩鮭めし」の蓋を開けると画像1のように、ご飯の上には鮭のほぐし身とイクラの醤油漬けを載せたものになっていますが、このスタイルが古くから踏襲されていたわけではなく、時とともに大きく変化しています。
例えば1980年頃までの「石狩鮭めし」は、シンプルに鮭フレイクを敷き詰めたものでしたが、その後何回かの見直しを経て、現在の形になっています。
私が食べた経験があるものだけでも4種類あるのですが、それらを比べると、とても同じ駅弁とは思えないほどの変化を遂げています。
箱に記された「大正12年からのロングセラー駅弁」というフレーズを読んで、「大正時代の駅弁と同じ」と思い違いをされる方がいらっしゃると思いますが、それは違って、あくまで現代版「鮭めし」です。
現在販売されているものは、2000年代初頭にリニューアルされたもの。

ご飯は工夫されており刻み昆布が入れられています。
鮭、イクラともに若干塩加減が強いので、薄味が好みの方には塩辛さが気になるかも知れません。
と、ここまで書いて気がついたのですが、この駅弁は鮭とイクラで親子丼でした。
親子丼は、鶏と卵だけとは限りませんね。

さて、この駅弁を食べながら向かう先は、タウシュベツ橋梁で有名な士幌線の廃線跡巡りです。
せっかくの機会なので、少しばかり写真でご紹介しましょう。

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画像2の上2枚がタウシュベツ川橋梁。
昭和30年に、ダム建設により誕生した糠平湖の水位の変化により湖底に沈んだり、写真のように現れたりするので、かなり痛みが進行しています。
しかしながら、アーチ橋の美しさもあり、湖底から出現した姿は、幻想的という言葉がピッタリな雰囲気です。

下の左は、国の登録有形文化財である第三音更川橋梁。
昭和11年竣工の北海道内最古のコンクリート製アーチ橋で、近年になり保存のための強化工事が行われました。

下の右は、昭和62年の士幌線廃止により廃駅となった幌加駅跡。
駅舎は解体されてしまいましたが、ホームやレールなどが残されています。
幌加駅周辺には営林署、貯木施設や木材加工工場、貨物用側線、国鉄官舎、民間住宅など様々な施設が整い賑わっていました。

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士幌線廃線跡巡りは、同線の始発駅であった帯広駅がベースになるのですが、札幌から帯広へ向かう列車の中で駅弁を食べるには、乗車前に札幌駅での購入一択しかありません。
どこの駅弁にしようかと、駅弁の選択に迷った昭和な時代が、なんとも懐しいのです。