穴子。
鰻ほどの派手さはありませんが、意外と地味に日本の食文化の中に溶け込んでいる存在だと思います。
例えば、東京で鰻屋は街を歩けば簡単に見つけることができますが、穴子料理店となるとホントに少ない。
ところが、和食のお店に行けば簡単に穴子の天麩羅が食べられますし、寿司屋に行けば穴子の一本握りを食べることもできます。
つまり、穴子をメインでガッツリと食べることは難しいけど、ついでの一品として食べるという存在が、穴子のイメージではないでしょうか。
駅弁大会で、よく売れる商品の一つが穴子の駅弁。
「駅弁大会でこれ(穴子)が目当て」という、お客様の声もよく聞きます。
日常ではメイン料理として食べることが難しい穴子が、駅弁ならばガッツリと、しかも簡単に食べられる。というのが人気の理由ではないでしょうか。
ご存知のように、駅弁大会では各地の穴子系駅弁が集りますが、やはりメインは瀬戸内。
姫路、西明石、岡山、福山、広島の各駅のものがズラリと並びますし、種類あたりの仕入れ数も多く入ります。
そして、それらが夕方前には完売ということが多いので、人気の程が伺えるというもの。
話題の駅弁のような一過性の爆発的売れ行きではありませんが、どれもが地味に売れ、気がつくと完売というような状況で、しかも、それが毎年続くのです。
真面目に息が長い商品というのが、穴子系駅弁の評価と言えます。
さて、今回ご紹介するのは数多くの穴子系駅弁の中から「とろ〜り煮あなごめし」。
調整は、広島駅で明治34年から駅弁販売を行っている広島駅弁当。
穴子の基本的な調理法は「焼く」と「煮る」で、焼けば食感が少々硬く、煮ると「ふわっ」とした感じになります。
今回、ご紹介する穴子は商品名にあるとおり「煮る」穴子。
ですから、蓋を開けると白っぽい切身がズラリと並んだ状態で、写真では既にタレが掛かっていますが、タレは別添えのパックになっています。
そのタレは、ちょっと甘め。
そしてメインの穴子はというと、身が若干薄いのですが、駅弁としては合格ラインの厚さをキープ。
そのため、煮穴子のふっくらとした食感が楽しめます。
また、脂ののりも程よい感じで、穴子らしさを保っています。
ご飯は、薄めの茶飯ですが、おそらく出汁を利用しているのではないでしょうか。
濃くて甘めのタレと、よく合いますね。
そして端の方でひっそりとしているのは奈良漬けと高菜漬。
この高菜のピリ辛が素晴らしく、穴子めしで言うことではありませんが、高菜だけでご飯をいただけます。
この高菜は素晴らしい。
実を言うと、筆者は焼き穴子派なのですが、それでいても駅弁のレベルでこの煮穴子はお勧めできます。
ぜひ、一度お召し上がりください。