名古屋駅の駅弁といえば、やっぱり伝統の松浦商店。
松浦商店は大正11年に、それまで名古屋駅の構内営業を担っていた服部商店が廃業したことから、それを受け継ぐ形で駅弁事業を開始。
当初は、服部商店の調理場を借用する形だったと伝えられています。
今回ご紹介するのは「復刻弁当」。
同社ホームページによると「昭和初期の幕の内を可能な限り復刻」ということですが、画像1の掛紙は、昭和43年3月12日から使用された「明治百年記念 汽車100年シリーズ」からのものでした。
この「汽車100年シリーズ」は、掛紙収集家の間では、今でも語り草となっているほどの有名掛紙。
蒸気機関車、電気機関車、電車の中から鉄道史に足跡を残した20種を題材としたロングシリーズ。
今回使われていた新幹線は、シリーズ最後に登場したもので、昭和43年8月5日から使用が始まったものです。
さて、お弁当の中身ですが画像2のように、白ご飯、鯖の焼き物、白身魚のフライ、牛肉の炒め煮、煮物(竹の子、椎茸、鶏肉)、玉子巻き、蒲鉾、ひじきの煮物、くり豆、さくら漬け。
パッと見た感じでは、最近流行の彩り豊かな幕の内弁当と比べると、ものすごく地味感が漂ってはいますが、幕の内弁当の基本を見事に押さえたものと言えます。
私的には「ザ・幕の内!」という感じで、50代以上の人には、きっと「どこか懐しい駅弁」だと思います。
松浦商店の駅弁作りには、幾つかのこだわりがあります。
その一つが卵焼。
松浦商店の卵焼へのこだわりは、画像3に見られるような専用の卵焼機を使った手作りのもの。
1日に膨大な数の調整数を、こうした手作り品が支えていることに驚きます。
但し、残念なことに最近の社会状況の影響を受け、自社調理による卵焼は現在は休止中。
今後の社会状況を見極めながら、再開とのことです。
こだわりの二つ目は、焼魚。
画像4は、復刻弁当に入っていた焼き鯖のアップですが、赤丸の中心に極く小さな穴が見えるでしょうか。
普通に食べてしまっては、この穴に気付くことはまず無いと思いますが、実はこの穴がものすごく重要なのです。
画像5は、松浦商店で焼き魚を調理している様子ですが、これを見たら、もう穴の正体はおわかりですね。
そうです。この穴は串焼きの串を通した穴。
近年、焼き魚の調理には手間がかからないグリルにズラリと並べて焼く方法が主流なのですが、ここでは昔ながらの串焼きにこだわって調理されているのです。
この「復刻弁当」。
昭和43年当時の値段は150円でしたが、今は870円。
物価高騰のこの世の中。
駅弁の値上げも続々と耳にするこの時代に、870円の幕の内弁当が存在すること自体に驚くのは、私だけではないでしょう。
オールド駅弁ファンに、お勧めの駅弁です。