10月14日は「鉄道の日」。
1872年のこの日(旧暦9月12日)、新橋と横浜を結ぶ日本初の鉄道が開業しました。
実際は、それに先立つ6月12日(旧暦5月7日)に品川と横浜の間で仮営業を開始していますが、明治天皇臨席のもとに大々的な式典を行った10月14日が、正史に残る鉄道開業の日となっています。
今年は、それから150年の記念すべき年ですが、今から50年前の開業100年と比べると、鉄道業界、マスコミ、社会全体のどれを取っても、いま一つ、いや二つ盛り上がりに欠けているように見えます。
それは、おそらく国鉄が無くなり、全ての鉄道が民営ということに起因するものと考えられます。
100年の時は国鉄が中心となり、全国的に機運をを醸成し、大形企画を幾つも展開したのに対して、150年では各会社がバラバラに行っていることから、幾つもの小さな企画の寄せ集め的なもので、インパクトを高める中心企画の存在が無いためと思えます。
今回ご紹介する掛紙は、国鉄構内営業中央会が鉄道100年記念を祝う企画として、昭和47年(1972)に加盟各社共通の掛紙として展開したもの。
題して「動態保存蒸気機関車シリーズ」。
では、なぜ「動態保存蒸気機関車」がテーマだったのでしょうか?
昭和30年代から始まった国鉄の動力車近代化により、急速に廃車が進んだ蒸気機関車に対して、昭和43年3月26日の国鉄常務会は、蒸気機関車を「貴重な産業文化財」と位置づけ、動態保存を行う方針を決めました。
そして、その場所として紆余曲折を経た結果、京都の梅小路機関区(現京都鉄道博物館の一部)が選ばれ、鉄道100年記念事業の目玉として、10月14日に梅小路蒸気機関車館としてオープン。
これに合わせて、構内営業中央会の連携事業として「動態保存蒸気機関車シリーズ」を展開し、梅小路蒸気機関車館で保存される車両を図案として選定したのです。
この掛紙は、以下の画像の8パターンが用意され、掛紙下部に各事業者の名称が入れられるようになっていました。
画像では、静岡駅東海軒のものを示してあります。
前回のコラムで、大正11年(1922)の英国皇太子来日にあわせて、駅弁史上初めて全国共通図案の掛紙が使用されたことを紹介しましたが、今回紹介した鉄道100年記念掛紙「動態保存蒸気機関車シリーズ」は、構内営業中央会としては初、そして駅弁業界としても前記に続く2回目の全国共通掛紙でした。
その後も、共通掛紙を使われることが無いことから、百数十年の歴史を持つ駅弁でも、たったの2回しか企画されていない貴重な企画なのです。