豪華駅弁のはじまり

最近では、予約という限定品ではあるものの1万円を超える駅弁があるから驚きです。
私などは貧乏性なので、1万円を駅弁で払うなら、こ洒落たレストランでフレンチ or イタリアンを楽しむか、ちょっとした高級寿司店で寿司を食べてしまいたいなんて思ってしまうのですが、皆さんはいかがでしょう?

もともと駅弁は国鉄から価格の上限が決められていたのですが、昭和45年(1970)1月にそれが撤廃され、自由価格制へと移行しました。
そうした中で出て来たのが、それまでの常識では考えられない駅弁。
その走りと言えるのが、今日ご紹介する新神戸駅のしゃぶしゃぶ弁当「松風」。
「松風」は基本は守りつつ、その時々でバージョンアップされて来ましたが、画像が初代のもので発売は昭和49年(1974)10月14日ですから、今から46年も前になります。

『毎日グラフ』1974年12月5日増刊号より

この駅弁が発売されたインパクトは、強烈でした。
なにしろ、しゃぶしゃぶの駅弁ですからね。
しゃぶしゃぶと言えば鍋料理。
それが箱入りの駅弁になってしまった意外さと言うか、正統派しゃぶしゃぶから見れば、「これがしゃぶしゃぶ?」と思わなくもありませんが、今までに無かった駅弁スタイルということで、アッと言う間に人気商品に。

発売当初のお値段は1000円。
鉄道開通100年を記念して発売された、日本最初の1000円駅弁でした。
1000円という価格は今では普通ですが、昭和49年当時は「幕の内弁当」が400円。浜松駅の「うなぎめし」が400円と600円。「寿司」が200〜300円が主流の時代ですから、いかに高価格(常識外れ?)な駅弁だったのかが、わかると思います。

昭和40年代後半は、大阪万博の後を受けて繰り広げられた「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンにより、国内個人旅行が増大した時期であり、それに伴い旅行者が支払う消費行動も、それまでより大きく増加しました。
そうした社会状況を背景として、上手く登場したのが「松風」。その成功が以後に続く豪華駅弁へと繋がって行くのです。