桃中軒「港あじ鮨」春

先日、所用で御殿場線の裾野駅まで行ってきました。
千葉県内の我家から御殿場線(国府津〜沼津間を結ぶ旧東海道本線)というと、国府津駅で乗り換えるのが普通なのですが、たまには違った経路ということで、一方の始発駅である沼津から入ることにして、熱海行き電車の車中の人に。

車内は、平日にも関わらず仕事をリタイアしたであろう年代の人で混んでおり、その多くが小田原で下車して箱根方面へ向かうか、熱海や伊豆方面へ向かうグループのように見受けられ、けっこうな賑やかさです。

熱海で沼津行きに乗り換え、沼津到着は11時半というお昼時。
そこで、桃中軒さんの売店で駅弁を物色。目に止まったのが、定番の「港あじ鮨」。その理由はパッケージに「春限定」のロゴです。
Suicaで、お代1080円也をお支払いしてホームのベンチへ。

沼津駅は、東海道本線全盛期は長大編成の特急や急行列車が停車する主要駅でしたが、今はローカル色が漂い、その広大な構内を持て余しているようにも見えますが、駅舎を除くホーム等の設備は昔のままなので、新しい今風の無味乾燥的な駅とは異なり、鉄道全盛時代の風格をそこかしこに感じることができます。
ホームは、短編成の列車が停車する中央部分を除けば人がいないので、1人でベンチを占領して駅弁を突っ突くには、ある意味よい環境であるとも言えます。

さてさて、駅弁の蓋を開けるとこんな感じです。

鯵鮨と言えば大船軒ですが、大船軒の握りがズラリと並んでいるのとは異なり、こちらは異なった3種類の詰め合わせ。
そして、最大の特徴でありアイディアが、本山葵を自分で擂り下ろすというところ。ちゃんと底にギザギザが付いたプラスチック製の下ろし皿が付いています。

この山葵、伊豆天城産のものだそうです。
家で使う山葵は、すっかりチューブ入りになってしまいましたが、駅弁でこうした擂り下ろす山葵が使えるとは、なんだか昔懐しく嬉しくなってきます。
もしかすると、若い人の中には「山葵を擂り下ろす」ということを知らない人が居るかも知れません。
なにしろ、以前にお会いした高校の先生が「急須を知らない生徒が多い」とおっしゃっていました。つまり家庭でもペットボトルのお茶しか飲まないので、茶葉を急須に入れることを知らないそうで、急須を見せても使い方を知らないとか・・・。

詰め合わせの3種の鮨ですが、それぞれに名前が付いています。
「賑わい鯵鮨」
一見したところ奈良の「柿の葉寿司」に似ていますが、鯵鮨を山葵の葉で包んだもので、葉っぱも一緒に丸ごと食べます。
食べると山葵の香りが口いっぱいに広がるのですが、逆に言うと鯵の存在感を打ち消してしまっているようにも思えるところが、少々残念かも知れません。

「にぎり鯵鮨」
鯵鮨の王道とも言える、見てのとおりの鯵の握り鮨。
パッケージに示された「春限定」とは、実はこの握り鮨のことでした。
どこが「春」なのかと言うと、鮨を帯状に巻いている葉っぱが桜の葉なのです。
これが通常バージョンだと、しその葉になります。
食べてみると、ほんのりと桜の香りが漂いますが、「賑わい鯵鮨」とは異なり、あくまでも鯵が主人公であることを主張しているところが、好ましく思えます。

「あじわい太巻き鮨」
実は「港あじ鮨」を食べる度に微妙感を強く抱くのが、この太巻き。
太巻きなのでご飯の量が多く、それに青じそと白ごまが加わるので、量的に少ない鯵の存在感を全く感じないのです。
鯵は鯖ほどに存在感を主張しない食材なので、太巻きではなく、細巻き程度の方が良いと思うのですが、いかがなものでしょう・・・。

今回は、偶然とは言え「春限定」バージョンを食することができたのは、大きな収穫でした。