駅弁大会で見る、販売台の上に整然と積み上げられた駅弁の山。
今回は、その駅弁大会で目に飛び込む大量の駅弁が、開店前にどのように準備されるのか、駅弁大会の舞台裏をご紹介いたしましょう。
駅弁大会の会場となる百貨店の開店は午前10時ですから、それまでに販売の準備が完了していることが必須で、間に合わないということは許されません。
そこで、私の会場到着時間は午前6時20分。
それに間に合うように5時2分の朝一番の電車に乗ります。
当然、真冬のこの時間、外は真っ暗で車内はガラガラ。
ゆっくり寝ながら都心へと向かいます。
ちなみに起床は3時半。
会場入りして身支度を整えたあとに最初の仕事は、夜中に到着した駅弁の仕分け作業。
写真のようにカゴ車に満載された駅弁を、地方別に振り分けます。
駅弁大会に行くと、販売品が地方別に分かれていますが、そのための作業がこれ。
ここで間違えると、例えば山陰の駅弁が近畿に行ってしまうなど、とんでもない場所に並ぶことになってしまいます。
ですから、1箱1箱確認しながらの作業になります。
カゴ車の数は、この時点では十数台でしょうか。 これを1人で捌きます。
実は他のメンバーは7時〜8時に来るのですが、狭い会場なので人や段ボールでごった返す前に、夜中到着分の片付けをしておかないと、後々の作業がスムースに流れなくなってしまうのです。
そのため、この作業だけは1人で行うに限ります。
陶器製の駅弁は重たいので、それがカゴ車に満載だと、その下ろしだけで汗だくに。
けっこうよい運動になるので、最初の数日は毎年恒例の筋肉痛になります。
7時になるとボツボツと人が増え、各地方別に積み上がった段ボールの品出し作業が始まります。
もう、ここから開店までは時間との戦い。
どんどん開梱しないと間に合わなくなるので、空の段ボールは投げ捨て状態。
そのうちに我々が「段ボール部隊」と呼んでいる片付け専門の人が来てくれます。
この品出しの最中にも朝到着便の駅弁が続々とカゴ車で搬入されて来ますし、また調整元からの直接配達も入ってきます。
時々、というか日に数件は誤搬入(実演販売の食材が、間違えて輸送駅弁コーナーに搬入)もあるので、その対応に手間がかかることも。
この品出しのポイントは、メーカーと種類と発注数を頭に入れて、それを売場全体の配置イメージとして思い描くこと。
商品は、当たり前ですが地方別に順番に搬入されて来るわけではないので、そこが上手くできていないと、後から遅れて搬入されて来た商品を入れるスペースが無い!なんて事態に陥ってしまいます。
その感覚が掴めるまでの、1日、2日は、駅弁を並べるスペースの確保(地方ごとのスペース割)に最後までドタバタします。
逆に、そこが上手く出来るようになると「ここは●●が未着だから、その分スペースを空けといて」とか「そこには、あと●●と●●が入るから詰めすぎないで」などの指示ができるので、スムースに仕事が進みます。
品出しがあらかた終わると、ポップと呼ばれているカード(弁当の写真と価格が記されているカード)を駅弁の上に置く作業を手分けして行い、ほぼそれと同時並行で発注リストとのチェックを行います。
この作業が、だいたい9時から9時半頃で、もし未着があれば、関係部署に連絡をして情報共有をすると同時に、調整元や運送会社に連絡を行い、荷物の探索を行います。
よくあるのが道路事情(事故渋滞など)による遅延。
そして最悪は、運送業者のミスによる迷子で、「なんで、そうなるかな?」と思うような遠く離れた営業所で見つかることもあります。
売場を預かるものとして避けたいのが、開店直前の9時55分前後に商品が到着することで、これは正に秒単位での時間との戦いに。
開梱、品出し、片付けを数分で行い、10時ピッタリには何事も無かったかのように、お客様をお迎え。
これが出来るのは、手慣れた者同士の連係プレー。数人がかりで、ワッと取り掛かって片付けます。
駅弁大会と言えば冬ですが、冬といえば雪が大敵であることは、駅弁大会も変わりはありません。
特に北陸や北日本の調整元は、雪のため運送会社の集荷停止があり、もうそうなったら我々はどうすることも出来ないので、お客様には申し訳ありませんが欠品となります。
雪の場合はそれが数日から、長いと1週間近くに長期化することもあります。
輸送手段は、トラック便や航空便(航空便の場合は搭載便の指定もします)があるのですが、大雪の地方からの便が止まるのはわかりますが、時には予想外の地方便が止まってしまいビックリすることも。
大雪は北陸や東北地方なのに、なぜか九州からの荷が止まってしまったことがありました。
飛行機は同じ機体が日本中を飛び回るので、運用上とんでもないところに影響が出て、雪の影響を受けない路線まで欠航になってしまうことがあるのです。
駅弁大会最強の敵は雪なのです。
10時開店のアナウンスとともに、お客様を迎え入れた瞬間に「今日も無事にスタートできた」と、ホッと胸をなで下ろす毎日がそこにあります。