駅弁はどれだけ売れたのか

輸送方法が発達した今では、大都市のターミナル駅に行けば各地の駅弁を入手することができますが、昔は駅弁と言えば、その土地に行かなければ入手できないものでした。
では、実際に駅弁はどの程度が各駅で売れていたのでしょうか?
今、手元に新潟鉄道管理局が調査した管内の駅弁販売駅で、1976年(昭和51)の1年間にどれだけ売れたのかを調査した一覧表があります。
全部で13駅があるのですが、今回は、この中から中規模駅ということで北陸本線と信越本線が交わる直江津駅の様子をご紹介したいと思います。

直江津駅の駅弁販売は1900年(明治33)に始まり、1976年当時は「ホテルハイマート」と「いかや旅館」の2社が構内営業を行っていました。
下の表が、1976年の1年間における1日の平均販売数です。

種類 単価 製造者 1日平均
幕の内 500円 ホテルハイマート 267個
すし 300円 39個
いなりずし 250円 29個
かにずし 500円 50個
幕の内 500円 いかや旅館 225個
すし 300円 42個
いなりずし 250円 13個
かにずし 500円 57個

2社の合計販売数は、1日平均722個にも達しており、このうち492個が幕の内弁当で、全体の68パーセントをも占めています。

当時の直江津駅を発車する列車本数は、普通37本、急行20本、特急24本の合計81本(臨時は除く)でしたから、単純に平均すると1列車当り8.9個となり、普通列車を除いた優等列車のみに限定すると16.4個もの駅弁が売れていたことになります。
もちろん、この中には早朝や深夜の列車も含まれていますから、実際は20個近くが1列車で売れていたのでしょう。

当時は地方の中規模駅でも、これだけの数の駅弁が売れていたのです。
新幹線、高速道路、航空路が今ほど発達していなかった時代ですから、鉄道、特に在来線への依存度が高い時代でした。
そんな時代の鉄道利用者の良き相棒が、駅弁だったのです。