明治中期のホーム立売

皆さんは、ジョルジュ・フェルディナン・ビゴーというフランス人をご存知でしょうか?
まぁ、普通の人なら知らないとは思いますが、彼が描いた下のスケッチなら見覚えがあるのではないかと思います。

この絵は、歴史の教科書に挿図としてよく使われています。
ビゴーは、フランス人の漫画家であり、風刺画家。
明治15年から17年間に渡り日本に滞在し、日本の風俗や、このような風刺画を多数描きました。
彼が描いたスケッチは、今では当時の日本の社会を知る上での重要な資料となっていますが、その中に鉄道関係を描いたものも含まれています。
下のスケッチは、ホームでの立売の様子を描いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

描かれた場所の特定はできませんが、「東京・神戸間の鉄道で」と記録されていることから、現在の東海道本線のどこかの駅であることは間違いないでしょう。
客車の側面に「SECOND」と書かれていることから、2等車の乗客がホームに立つ立売に土瓶を差し出し、お茶の差し替えを頼んでいる場面のようです。
もちろんペットボトルなど無かった時代、駅売りのお茶は土瓶入り。旅行の途中でお茶が飲み終わってしまうと、空いた土瓶にお茶を注いで売ってくれるというサービスがありました。

絵の中には、2個の汽車土瓶が見えますが、そのいずれにも絵が描かれているように見えます。明治30年代に入ると、それまでの絵入り土瓶から駅名入り土瓶へと変化するので、この土瓶は、明治20年代後半から30年代初頭のものと考えられます。

また、立売が持つ商品には折詰弁当と、ビン入り飲料が描かれています。
ビン飲料として考えられるのは、ビールとサイダーですが、サイダーが一般化するのが明治30代に入ってからなので、一般化が早かったビールである可能性が高いのではないでしょうか。

明治時代のホーム立売の様子を具体的に知る資料は、ほとんど残されていないため、なかなか知ることができません。
そんな中にあって、ビゴーが描いたこのスケッチは、明治20年代後半から30年代初頭のホーム立売の様子を具体的に知る資料として、大変貴重なものと言えます。